快楽は飽きる。でも、苦痛の緩和は、苦痛が強ければ強いほど飽きることがない

5月の健康診断の結果が出た。
血液中の中性脂肪の値が1808mg/dlだった。
基準値が30-149mg/dlというのを鑑みるまでもなく、俺の身体は異常事態にある。

原因は分かりきっている。
アルコールだ。

俺は地下室の手記に憧れ、苦痛の中にひりつくような快楽を得るよう苛烈に生きたいと願っていた。
いや、願っていると思い込んでいただけだ。
本当は何もしないことで舞い込んでくる焦燥を正当化させる理由がほしかった。
そしてその苦痛を和らげるためにアルコールに頼っていた。


この浅はかな考えが診断結果に表れている。

快楽を求めるためにアルコールを摂っているならまだしも、苦痛の緩和のために飲んでいたのなら、それは快楽主義に反する行いだ。

苦悩を極めることで得られる快楽など、ただの錯誤である。
現実逃避のためにあおる酒など……


しかし、アルコール依存症はれっきとした病気だ。個人の意志の弱さや歪んだ性格によるものではない。
依存症は「快楽におぼれている」と勘違いされているが、そのまえに「苦痛におぼれている」。

タイトルはある医師の言葉だ。
苦痛の緩和には飽きがこないという言葉、そこから依存へと繋がっていく。
もっとも、快楽が飽きやすいというのは納得はできないが。


酒が飲めない体になる前に、対策をしていこうと思う。