2023-01-01から1年間の記事一覧

ダチュラ

この世を破壊するにあたう人とはいったいどんな人物であろうか。 この世を破壊するものというラスボスじみた人を想像するのは難しいが、村上龍はたやすくこの問いかけに答えて見せる。 それは誕生を祝福されなかった者だ。 村上龍の「コインロッカー・ベイビ…

愛の捌け口

中学生の頃、部活の顧問がこんなことを言っていた。 「男子は見て覚える。女子は一から十まで教えてやらんといかん」 これは一部抜粋だ。本当はこの後に「お前らは弱すぎて一から十まで教えんといかん」と言われている。 今さら十何年もの前の発言を蒸し返し…

負の技術

先日職場で労災が起こり、部内の上の連中は大騒ぎをしている。やれ、保護具をちゃんと着用しろだの、ルールの徹底しろなど口うるさく指摘をしてくる。あげくには、安全確認を怠ったなど、ルールを破ったなどと実際に労災に遭った人を責めるような言い草も見…

快楽は飽きる。でも、苦痛の緩和は、苦痛が強ければ強いほど飽きることがない

5月の健康診断の結果が出た。血液中の中性脂肪の値が1808mg/dlだった。基準値が30-149mg/dlというのを鑑みるまでもなく、俺の身体は異常事態にある。 原因は分かりきっている。アルコールだ。 俺は地下室の手記に憧れ、苦痛の中にひりつくような快楽を得…

交差する俺たち

個人的にいらついて仕方のない人物がいる。岸田首相の息子、岸田翔太朗だ。 海外出張中に公用車で観光していたことや、首相官邸で忘年会を開く己の立場をわきまえない公私混同さがいらつく原因ではない。 それは親父と仲睦まじく、その親父に自分の人生を預…

30+1歳の原点

5月15日を迎え、31となった。 25からブログを書き始め、途中止まっていた期間もあったが、頭の片隅にはつねに文章を綴ることを意識していた。これからもこの営みは続けたいと思う。 誕生日、ということで自分の生まれた意味をこいつは考察しだすのだろうか。…

アーバンモンキー

4月中旬、友人に誘われ人生初の合コンに参加をした。 いや、あれは合コンというより小さい街コンというか、小規模なパーティというか、「アウトドア好きで集まろう!」とお題目が設定されていたので、ちょっとしたイベント程度のものではあった。 当然、俺は…

二人の王国

2004年、夏。小学生だった彼は背伸びをしたかった。恋というものがどういうものかを知りたかったのだ。少年はなけなしの小遣いをはたいて、当時ベストセラーになっていた「世界の中心で愛をさけぶ」を手にとってみた。 結果として、本の帯に書いてあるような…

彼岸花

9月も終わり、彼岸花がその妖しい花弁を開いているのが目につく季節となった。家近くの川沿いを歩くとその彼岸花達が咲き誇っている光景を見ることができる。このどこか現実離れした派手さがあり、どこか不吉な印象をもたせるこの花が好きだ。 彼岸の時期の…

旧友と塩レモンスプリッツァー

疎遠になった友に連絡をすることにはいつも勇気がいる。それは連絡するきっかけがないのが大半の理由で、そもそも疎遠になったのはその機会が徐々に無くなっていった為である。進学、就職、結婚と互いの環境はどんどん変わっていて、昔のようなフラットな関…

この世の果てで酒を呑む中年 MI-DO

若い女性に人気」はまったく信用ならない。そのほとんどが広告で、下らないイメージ先行のポップカルチャーであるからだ。僕が信用するのは社会の隅っこに追いやられた哀愁ただよう中年のおじさんだ。彼らが好むものは本物が多いと勝手に思っている。 彼らの…

恋文

ドイツ出身の思想家ハンナ・アーレントにはこんなエピソードがある。 ユダヤ人であった彼女は一度強制収容所に捕らえられるも脱出、ナチスから逃れるため複数の同郷人達とアメリカへ亡命を図った。しかしいつまた捕らえられるかわからない恐怖と、肉体的な疲…

さよならを教えて

大事なものをバラバラに破壊したり、猫を轢き殺したり、目の前の女を陵辱したらどうなるんだろう――突然そんなイメージが脳内でフラッシュすることはないだろうか。無論そんな考えを実行することはないし、むしろそんなことを思いついてしまったことに罪悪感…

たはむれに

シェリー酒とは酒精強化ワインのことで、白ワインにウイスキーの薫香が加わったような、飲み口は軽やかながら重厚な香りをたっぷり味わえるお酒である。熟成の度合いによって色も変わり、白ワインと変わらない透明さを持ったものからウイスキーのような琥珀…

なんでも無いことを幸福に思える能力か、些細なことでも苦しむ能力か

9月も中旬となり、京都の空は不安定で気づけばしとしとと雨が降っている。うだるような夏の熱気も、冷たい雨が大地の熱を取り去り、すっかり秋の面持ちとなってきた。 夏休み明けは自殺者が増えるというニュース、教師や保護者は注意喚起をとのことだ。が、…

戦争の思い出

小学3年生のころオーストラリアの現地校へ通っていた。 オーストラリアに来て1年しか経っていない俺は英語に関しても未熟で、聞き取るのがやっとの俺は、環境に対する不安とクラスの子の足を引っ張っているという己の尊厳が傷ついた苦しい状態であった。 そ…

甘えたい

今日は何もやる気が起きず、ずっとベッドに横たわっていた。 相変わらずの不眠と酒に頼る毎日。 友達は心配してくれる。ありがたいが、申し訳ない。 病院へ行けと言うやつもいる。正論であるが、俺が欲する答えではない。 そもそも今の状態でメンタルやって…

踊る女

高校生の文化祭のとき、忘れられない体験をした。 それは同級生のダンスパフォーマンスを見た時だ。 彼女らはKARAのミスターを制服姿で踊っていた。 ミスターのMVではズボン姿で腰に付けた作業帽をぐりぐりふりまわすのに対し、彼女たちは制服のスカート姿の…

ナチズムの美学

これはベンヤミンが「ファシズムは政治の美学化である」と指摘した通り、ソール・フリードレンダーも同じ問題意識を持って、ナチのプロパガンダ映画の特徴から「キッチュ」と「死」が埋め込まれていることを主張した本だ。 さらにナチズムは性愛と結びついて…

しじま

昨年の11月から働き始め、一人暮らしもはじめた。 眠れぬ日が続き、それでも不思議と体は元気だった。 頭の中は絶えず回転し、つぎつぎとアイデアが浮かび上がっていた。 そして脳内には妙なイメージ―タービン内でガスがごうごうと噴出しているような―が付…

押し付けられた反逆は深刻な自己矛盾を生む

平手友梨奈が「HYBE JAPAN」に移籍をする。BTSを擁するプロダクションの日本支部だ。 また、平手友梨奈の表現を見られるのは楽しみで仕方ない。 もともと在籍していた欅坂46では「サイレントマジョリティー」「不協和音」のヒットもあって、欅坂は反逆のアイ…

どうして書くのか

今、連続不審死事件を起こした木嶋佳苗が執筆した自伝小説を読んでいる。これを手に取ったきっかけといえば、最近新しくkindleunlimitedを契約したからで、この小説はそのラインナップのひとつであった。普段なら決して身銭をきってまで読みたいとは思わない…

俺は「ママ虫」と言う側の人間だ

1月下旬、日本には最強寒波が襲来し、俺は芯から冷やす冷気にからだを震わせながら、2度を下回る極寒の倉庫で積み込みと、部品の生産準備とに追われていた。 毎日その倉庫で作業していたため、俺の体にも変調が見え始めていた。 そんな折、同僚の女性社員が…

供養

〇〇さん、〇〇さんご結婚おめでとうございます。 僕と〇〇は高校時代からの仲で、同じ大学に進学し、そしてふたりとも7回生まで大学に在籍していた、いわば生き写しのような関係です。 僕たちの大学時代というのは実は苦しいものでした。学費を払ってもらっ…