小学3年生のころオーストラリアの現地校へ通っていた。
オーストラリアに来て1年しか経っていない俺は英語に関しても未熟で、聞き取るのがやっとの俺は、環境に対する不安とクラスの子の足を引っ張っているという己の尊厳が傷ついた苦しい状態であった。
それでもトロイとエドワードは俺を温かく受け入れてくれ、自然に遊んでくれていた。
そこで俺の平穏を一変させる、ある出来事が起こった。
それは歴史の授業で先生が「オーストラリアは侵攻をしたことのない立派な国だ」、と述べたあと、
「そんな国に戦争を仕掛けた国がある。それが日本だ」
それを聞いた瞬間、俺はおびえた。
日本人は悪いやつだといって、みんなからいじめられたらどうしよう。
トロイとエドワードと友達でなくなってしまったらどうしようと。
その瞬間は自分が日本人であることを本気で呪った。
あのとき、教室に流れていた沈黙はさらに俺を追い詰めていった。
そこから数日、びくびくしながら学校に通った。
結果として、俺はいじめられることはなかったし、トロイとエドワードも何も変わらず、普段通り俺に接してきてくれた。
戦争が終わって60年近くたっていた時でも、戦争は子どもを追い詰めるような影響を及ぼす。
できれば俺と同じような思いをする子どもはいてほしくない。
そしてトロイとエドワードのような、気にせず一緒に遊んでくれる人が未来の子どもに増えてくれることを切に願う。
だから、戦争、反対。